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田舎のダンス

Dance in the Country 1883年 180.0cm x 90.0cm
同様にオルセー美術館に収蔵されている「都会のダンス」と一対になる作品。イタリア訪問時にラファエロの作品に感動したルノワールは、印象派から更なる表現を求めて、逆に印象派を脱するような作品を描くようになった。多くの人物が登場するルノワールの他の作品とは異なり、この作品では幸せそうに踊る二人の男女に焦点を当てている。
印象派はその名の通り、感じ取った物や対象物等の印象を描こうとするが、この作品は踊る女性を美しく描いており、男女の表情は印象派絵画の表現にはあまりみられないような、はっきりと視認することができるくらいに描かれている。
田舎のダンスはルノワール自身がそのような思考にある時期に描かれた作品であり、印象派にカテゴライズされるルノワールの作品にしては、人物描写等は印象派特有のが画風を伴っていない。
また対となる都会のダンス以外にも、「ブージヴァルのダンス」という男女二人が踊る同様な構図の作品も描いており、この3点は「ルノワールのダンス三部作」と言われている。ちなみにこの「田舎のダンス」も作品の舞台はブージヴァルである。
ダンス三部作の中でも、この作品だけは男性と女性の身長差が微妙に異なっている。
都会のダンスとは対照的に、庶民的でフランクな感じがし、また描かれている人物の表情もリラックスした感じを受け取れる。
「田舎のダンス」と「都会のダンス」はオルセー美術館で隣に並んだ状態で展示されており、ほぼ等身大の大きさのこの作品は、オルセーで二つ並べて直接見ることに大きな価値がある作品でもある。
田舎のダンスに描かれている女性は、後にルノワールの妻となるアリーヌ。都会のダンスに描かれている女性はルノワールの愛人でもあったシュザンヌ。対照的な恋敵でもある二人がそれぞれに描かれている等身大の作品が2対ならんでオルセー美術館に展示されているとは、当のモデル二人はあの世でどうおもっているのか?