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読書する少女

The Reader 1874年 46.5cm x 38.5cm
ここに描かれているモデルは、1870年代半ばの作品に多く登場するモンマルトル出身の少女マルゴこと、マルグリット・ルグラン。彼女が若くして命を落としたとき、画家は嘆き悲しんだ。
ルノワールは18世紀の画家フラゴナールの溌剌とした日常の人物表現に強くひかれた。この作品の中でもさりげないそのような人物の日常が描かれており、繊細に重ねられた色彩が、光を浴びた少女を浮き彫りにしている。
通常人物を描く肖像画では、人物が中心に描かれその視線は前方を向いているが、この作品は手元の書籍に女性の視線は向かっている。これは、読書をする女性自身を描いたというよりは、女性の読書をする行為の印象をとらえようとした作品でもある。その印象から女性自身の表現を生み出そうとしている。

この絵に描かれているマルグリット・ルグランは、あのムーランドラギャレットにも描かれており、30代の頃のルノワールのお気に入りのモデルでもあった。作品でたたえている表情からも、その快活さや陽気さが伝わってくる。しかし1879年の1月にチフスの1種である病に倒れ危篤状態となる。ショックを受けたルノワールは、面識のあるオーヴェル・シュル・オワーズの医師に連絡して往診を頼むも、その翌月の2月にルノワールに看取られ若い生涯を終えた。

当作品のオマージュの元となるフラゴナールは「読書する娘」という作品を1769年頃に作成しておりワシントン・ナショナルギャラリーに所蔵されている。