ウルビーノのヴィーナス
『ウルビーノのヴィーナス』は、豪奢なルネッサンス風宮殿を背景に、長椅子かベッドに寄りかかる若い女性の絵画で、ローマ神話のヴィーナスを描いた作品とされる。ヴィーナスのポーズはジョルジョーネの『眠れるヴィーナス (Sleeping Venus, 1510年頃 アルテ・マイスター絵画館)』を模倣したものと言われるが、ティツィアーノはさらに官能性を追求した作品に仕上げている。古典的、あるいは寓意的表現(女神であるヴィーナスになんらの属性はなく、想像上の存在)は見られず、異論の余地なく官能美にあふれた絵画である。 このような率直な表現は、描かれている裸身に無関心である鑑賞者にさえ、ヴィーナスは挑発的な視線を投げかけていると言われることが多い。ヴィーナスの右手は愛を表す花束を持ち、左手は画面中央に陰部を隠しながらも挑発するかのように置かれ、寓意画では貞節を意味するイヌはすぐそばで眠って描かれており