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落穂拾い

The Gleaners 1857年 83.5cm x 111.0cm
農民の出身であったミレーが農夫の姿を描いた代表作。落穂拾いとは、旧約聖書のルツ記に基づいたテーマの作品であり、ニコラ・プッサンも同様のテーマを扱った作品を描いている。
落穂拾いとは、収穫期の刈り入れが終わった畑に落ちている穂を一粒ずつ拾っていく作業のことであり、この絵を描いた当時のミレー自身も極貧の状態にあり、自殺を考えるほどの困窮した毎日を送っていた。
バルビゾン派の大家でもあるミレーは敬虔なクリスチャンであった祖母と、教会で合唱の指揮者も務めた父親の影響を大きく受けている。

19世紀当時のフランスは、大都市のパリと、農村地方の田舎、ブルジョワ層と農民階級の格差が顕在化して問題化していた時代でもあった。このような対立構造の中で、主にアカデミックで高貴な世界であった絵画の世界において、貧しい農民や労働者階級をテーマにした絵を描く事自体が評価されず、むしろ大きな批判をよんでいた。
農業大国であったフランスの農村社会にも、近代化の波が押し寄せ、広大な耕作地を極わずかな大地主が所有して、農地を持たない農民たちを雇うという関係が出来上がってくる。そのような格差社会等の政治的なメッセージを背景から読み取ることもできると理解され、アカデミックな世界で活動する批評家等からは多くの批判を受けた。
そのような背景もあってか、これらのミレーの作品は、自国のフランスよりも、プロテスタント色が強いアメリカ等で最初に評価された。