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医師ガシェの肖像

Dr. Paul Gachet 1890年 67.0cm x 56.0cm
ゴッホはこの頃、精神病院に幽閉されたトルクァート・タッソを描いたウジェーヌ・ドラクロワの絵のことを考えていた。ポール・ゴーギャンとのモンペリエのファーブル美術館訪問の後、ゴッホは弟テオドルス・ファン・ゴッホ(テオ)にこの絵のリトグラフが手に入らないか書き送っている。3か月半前、彼はこの絵のことを、彼の描きたい肖像画の例として考えている。「しかし、ドラクロワが試みて描きあげた牢屋のタッソの方がより調和に満ちている。他の多くの絵と同様、本当の人間を表現しているのだ。ああ、肖像画! 思想のある肖像画、その中にあるモデルの魂、それこそ実現しなければならないものだと思う。」
これと同様の構図の作品がもう一点あり、そちらはゴッホからの寄贈を受けたガシェが亡くなったあと、ガシェの遺族によりフランス政府の寄付されて、現在はオルセー美術館に収蔵されている。
こちらの作品は第一バージョンとされているが、1990年に大昭和製紙の会長が当時のレートで124億5千万円で落札され、一時は日本国内にこの絵があった。しかしバブルの崩壊後、この作品は1997年に売却されて現在は海外の個人収蔵となっている。